どんなビジネスでも「顧客満足」という指標はいまや、外せない重要な指標になっている。カスタマーサービスセンター、問合せ窓口、口コミサイトなどは、日常の中に普通に存在している概念だ。
そして、顧客満足度を高めるために必要なことというのは、提供しているサービスや商品によって違い、また、どんなお客さんを対象にしているのかによっても変わってくると思う。
当社も、フィットネススタジオを運営しているので顧客満足度という点はかなり意識している。お客さんに、どういうプログラムを提供したら満足してもらえるのか、どんなレッスンだったら楽しいと思ってもらえるのか、常に頭にある。
そして、この「顧客満足」というものは、サービスを提供する側が100%担うべきものだと思っていた。
けれど最近、もしかしてそれは違うのかもしれない・・と思うようになった。
当社オリジナルの、わりと好評な「ランナーのための体幹トレーニング」というプログラムを通してそのことに気づいた。
このプログラムはランナーでなくても参加でき、床でやるような地味なトレーニングと違って、エアリアル器具やポールを使って遊び感覚で鍛えられるプログラム。ありがたいことに最近このプログラムに申込みをするお客さんが増えてきている。
プログラムは、平日夜と土日で週に4コマ設定している。1コマの定員は7名、支払いは1回ごとの受講料金ではなく、8回コースで19,800円の前払いという設定にしている。
運営側としては、申し込んだお客さんの動向をつかんで、なるべくどのコマも人数を均等にしたいし、毎回定員いっぱいまで受け付けられるように、新規の体験呼び込みもしたい、というのが本音。
そして申込後は早めにコースを消化してもらうほうが、次の申し込みを促せて売上にもつながるからできれば週1、2回、コンスタントに来てくれたほうが嬉しいと思っている。
しかしそのためには、何らかの制約をお客さんにつけることが必要になる。たとえば、申込コースに受講期限を設ける、来店するコマを固定にしてもらう、月4回は必ず消化されるシステム、など。
こういうことは、習い事やエステなどの業種もきっと似た様なところはあると思う。
私も当初は、期限を設けたり、1ヶ月に最低3回は来てもらう、など、何かしらの制約をつけることを考えていた。しかし、これまでお客さんの動向を見ていると、毎週欠かさず同じ日時にスタジオに来られる人は本当にわずかで、正直にいうなら、週末に突発的な用事も入らず、風邪も引かず、台風が来てもブレずに来る人は私が思いあたるところ・・たった一人。
よほど目標がはっきりしていて、生活パターンがブレない人でないと日常の習慣を変えるのというのはそれくらい難しいことなんだ・・というのを痛いくらい実感している。
というわけで、結局、事前予約制ということ以外は、他にはなんの制約もつけずに運営している。どのコマでも参加可能、3ヶ月空いてもいいし、コース消化までの期限は無い。
お客さんにとっては自由度が高いが、正直、運営は容易ではない。
でも、このシステムは自由度が高いこと以外にも「顧客満足度を上げる要素がある」ことに気づかせてくれた。
毎回どのコマもお客さんの人数も集まった顔ぶれも変わる。
長く通っている人、初めて体験に来た人、半年ぶりに来た人、たまたま参加者1名でインストラクターとマンツーマンになるとき、定員一杯でワイワイした雰囲気になるとき、3名くらいでゆったりトレーニングできるとき、など、運営側で不可抗力な部分が、実はお客さんにとって良い効果となって表れている。
体験者がいれば、無意識のうちにがんばろうとするので、できなかったことができるようになったり、久しぶりに会った人同士だと会話も弾む。ふだん接している年齢層や職業とは違うひととも会話するので、トレーニング以外の耳より情報を聞いたり。「へぇー、そっかそういうことなのか」というネタも拾えたり。たまたまマンツーマンになればちょっとしたお得感もあったり。
もちろん、インストラクターはお客さんに満足してもらうためにいろいろな工夫をするけれど、トレーニングそのものにはどうしたってマンネリが出る。でも、毎回、参加するメンバーや雰囲気そのものが変わったりすることで、お客さん自身がトレーニング以外の刺激を自然に感じているのだ。
ならば、こういうことを狙って、つまり運営サイドがそれをコントロールできるようにすればいいのでは、と考えたくなるが、なんとなくだけどそれはうまくいかないと思う。偶然生まれる意外性のようなものがお客さんを満足させているように思う。
では、運営側ができることは全くないのか?
この、偶然だけどもたらされる効果が高そうな事象を、間接的にでもなんとかコントロールできないものかと思う。
きっとこの解答を見つけるのはとても難しいことだと思うけど、一つ、できることがあるとしたら「どんな状況にも臨機応変に対応すること」ということになるのではないだろうかと考えている。
集まったメンバーに対する参加者の紹介の仕方、それぞれに話しかける内容を工夫してお客さん同士がお互いに関心をもってもらうように努めること。
そのためには、ふだんからお客さん一人ひとりを良く観察して、ちょっとした変化に気づくことが必要なのだと思う。
これまで、サービスを提供する側、受け取る側という2者の視点でしか「顧客満足」を考えていなかったが、サービスや商品によっては、当社のようにお客さん側に満足度を上げるヒントが隠れている場合や、もっと他の形もあるのかもしれないと思うようになった。
当たり前を疑うことができたら、きっと顧客にとっても企業にとっても良いサービスを創り出すきっかけをつかめるはずだ。
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人は常にいろいろな“可能性”を秘めていると思います。自分自身も、一緒に働く仲間も、何かちょっとしたきっかけがあればプラスに発揮される能力が隠れています。
当社はその「ちょっとしたきっかけ」をとおして、お客様自身に新たな能力に気づいてもらいたい、それをビジネスにつなげてもらえるようなサポートを目指しています。