過去事例、他社事例で共有されづらいこと

仕事をするときに、他者の成功事例や失敗事例を参考にすることがあると思う。いつもの業務だけでなく、全社的なプロジェクトや大きなイベントに携わるときには特に、過去の成功や失敗、あるいは他社事例などを、部署やプロジェクトチームで共有する機会があるのではないだろうか。

私も会社員として働いていたときは、そうした事例を多く目にしてきたし、参考にしてきた。しかし、成功事例や失敗事例で共有されていることの中には、表面的にとどまっているものも多くあるな、と感じている。

たとえば、どんなプロジェクトでも、成功の秘訣として下記のようなポイントについて触れていることが多い。

  • ゴールを明確にする
  • スキルの伴った要員をアサインする
  • プロジェクトを推進する力、周りを巻き込む力を持つ
  • チームとしての一体感を作る
  • 工程管理、進捗管理をする
  • 課題は先送りにしない、すぐに改善する

これらはどれもプロジェクト成功には必要な項目であって、全くその通りだと思う。しかし、事前にこういうポイントが分かっていても失敗するプロジェクトもある。

それにはいろいろな原因があると思うが、私が一つ感じているのは、成功の秘訣として挙げられるポイントについて「具体性」の共有があったかどうか、は重要だと思っている。
「具体性」というのは、つまり小手先のノウハウに留まらない内容だ。

たとえば、

・ゴールを明確にする
→明確にしたゴールをチームメンバーにどう伝えていたか。
そのゴールの持つ意味をメンバーは自身で理解して自分の役割に意義を見いだせていたのか。
その意義を理解してもらうためにどんな工夫をしたか。

・プロジェクトを推進する力、周りを巻き込む力を持つ
→推進するために必要なことは何か。
推進する際に障壁はなかったのか。
周りを巻き込む際に、どのような人物を巻き込んだか、そのためのアプローチはどう工夫したか。

など、一つ一つの項目についてかなり具体的な部分まで含めて知ることが必要だと思う。

そして、上記のような具体性以外にも、共有されづらいけれどもプロジェクトの成功のために重要だと考えていることがある。

それは、

①プロジェクトに対する熱量、原動力
②上手くいったときは、どのようなタイミングが重なったか

である。

これらが重要だと思う理由は2つある。

私はかつて、事業会社を2社経験した後にコンサルティング会社に転職した。転職した理由は、様々な事業にまつわる他社事例を知りたかった、というのが正直なところだった。

転職する前に勤めていた会社で、全社的な業務改善を行う仕事にリーダーとして取り組んでいたときに、

「同じような業種の会社はどうやっているのだろう」
「自分の経験値がもう少しあれば、きっともっとスムーズにできたのでないか」

というようなことを日々感じていて、他社のうまくいった事例をとにかく知りたかった。

そして、コンサルティング会社に転職してからは、多くのプロジェクトに携わる機会があったものの、自分が過去に知りたかったことはプロジェクトの表面的なものでしかないことに気づいた。
プロジェクトの運営に関するノウハウやナレッジは得られるが、何がゴールで何が最適解かは、会社の風土や目指していること、プロジェクトに関わるひとによって違う。

この部分がそれぞれのプロジェクトで違うので、必ずしも他社事例が当てはまるわけではない。

何よりも、プロジェクトを成功させたいという人達の熱量が、課題を解決する根気強さにつながっていたり、停滞していた課題がスムーズに進められるきっかけにつながっていたりすることを肌で感じた。

そしてもう一つの理由は、自分で事業を立ち上げて日々、試行錯誤している中で実感している。いま私が取り組んでいることの多くは、うまくいかずに停滞し、進まなかったりすることが往々にしてある。

そんな中でも、わずかだがうまくいったこともある。うまくいったことの要因は私に十分なノウハウがあったからではなく、「これを成功させたい」という熱量が工夫を生み出して行動につながり、結果的にいろいろな良い偶然を呼び込むことができたからだと思う。

プロジェクトを成功に導くために過去事例や他社事例を参考にすることは必要だ。それに加えて、可能であれば、文字に起こされたものだけでなく、その当事者(一次情報)にあたることができたらなお、良い。

文字には表われていない、記載されていない定性的なことが必ずあるはずだ。そして、聞くべきはノウハウよりも、「どんな気持ちで取り組んだか」「そのときに支えになったこと、助けられたことやモノの存在」だと思う。

そして何より、当事者の「熱量」に影響されることが一番良い「成功の秘訣」になるのではないだろうか。

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