「求める人材像」を欲張らない

先日、とある経営者をインタビューしながらその仕事ぶりを紹介する番組を見ました。たまたまテレビをつけたときに、ちょうど採用面接を終えたときのようで

インタビューアーが

「どんな人を採用しているんですか?」

というニュアンスの質問を投げかけていたように思います。

 

それに対して経営者の方は

「想像力のある人、気が利かなきゃダメ」

と答えていました。

 

聞いた瞬間「あ、いいな」と感じました。答えが明確で具体的で、何よりも欲張りでないのがすごいと思いました。

採用の件はその会話で終わっていて、もしかしたら本当はもう少し話していてカットされているだけかも知れませんが、まず「パっ」と出てきたものが分かりやすい。

 

「企業が求める人材像」は、たいがいアレもコレもと欲張りになりがちな傾向にあると思います。

私もコンサルティング会社で新卒採用を担当していたときがあります。

 

「求める人材像」についてはHPに記載したり、会社説明会で話をしたり、と何度も伝える機会がありましたが、実のところ、心の中では「求める人材の理想が高すぎでは・・」と思っていました。

私がいた会社もそうですが、一般的によく目にする求める人材像はだいたいこんな感じです。

  • 高い目標をもって何事にもチャレンジできる人
  • 周りを巻き込みながら目標に向かって最後までやり遂げられる人
  • 自ら行動できる人
  • 状況を楽しめる人

もう、てんこ盛り。

これ全部できる人いる?学生に求める前に、まず社員はどうなのよ・・と思わず口をついて出てしまいそう。

それとも、これらのどれかを満たしていればOKなのか、全部が必要な要素なのか、かなり曖昧です。

 

そして内容が抽象的すぎてわかるような、わからないような印象があります。

「高い目標」「周りを巻き込む」「行動」「楽しむ」

どの言葉も人によって捉え方が変わりやすい表現のため、何かを言っているようで何も言っていないのに等しい。

 

一方で、企業がこのような伝え方をしてしまう理由も、やはり理解できます。

特に社員数がそれなりに多い企業では、業務が細分化されていたり幅広かったり、それに加えて職種別採用をしていない場合は、どんな業務でもこなせる人、どんな人でも仕事ができるひとを求めたくなるのは、とても分かります。

そして、ひとくくりに「こういう人」と限定するのも難しいから、なんとなく”それっぽい”言葉を散りばめた表現になってしまう。

しかし、採用業務に携わっていた経験から思うのは、求める人材像は抽象的でないほうがいいし、数も多くないほうがいいと考えています。

なぜなら、このような「求める人材像」を聞いた、受けて側もその内容を抽象的にしか受け取れないからです。

 

冒頭に伝えた経営者の方の業界は企業や商品のブランディングを手がける会社でした。

「ブランディングを高める」というのはその商品やサービスを利用する人、企業に対する現在のイメージは、そもそもどういうものか、ということをあらゆる視点で想像して考えなければ成り立たない仕事です。

こうした仕事の特性と紐づけて「その仕事で最も必要とされる能力を持っている人」と定義されれば、面接を受ける側も理解できるし、自分の特性と合うか合わないかを考えて応募がしやすいはず。

 

私が採用業務をしていたとき、学生から求める人材像について「具体的にどういうことですか?」と聞かれたことはありませんでした。

おそらく情報の受け手側である学生もなんとなくでしか理解できていなかっただろうし、あるいは単純に聞きづらかったからかもしれません。

でも、あのとき、学生から「具体的に教えて」と質問されたら会社の業務と結びつけて

「こういう特性があるから絶対的にこの能力や特性を持つ人が必要だ」

と相手に伝えることができただろうか・・と思うと少し考えてしまいます。

できなくはなかっただろうけど、少なくとも求める人材像の要件は1つか2つになると思います。「状況を楽しめる人」は確実に不要なはず。

 

と、ここまで書いてきましたが、一概にどの企業も「求める人材像は具体的であるべき」が当てはまるとは思っていません。

単一事業(職種)の企業や職種別採用を実施している企業であれば、具体的な「求める人材像」を提示できるように思います。

しかし、そうでない場合は難しい。職種別採用に切り替えたとしても、ではその後の社員のステップアップ(育成計画)を見直さなければならなかったりと別の問題が発生する余地があります。

そのような企業が「求める人材像」をあえて出す必要があるのか、など、そういった意見も出てきそう。

 

すぐに結論が出るような論点ではないと思いますが、採用に苦戦している、内定を出しても辞退されてしまうという課題がなかなか解決されない場合は、一度「求める人材像」を見直してみてはいかかでしょうか。

見直すポイントは、会社の事業を遂行する上で、本当に必要な能力・特性を具体的な事例(実際の社員をモデルにする)にすることだと思います。

 

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