健康経営の意義については「社員が健康であることが仕事への取組みや意欲を高め生産性を上げる効果がある」
「企業の医療費負担軽減」あるいは「働き方を変えることで離職率を抑えることができる」といわれている。
内容はその通りだと思うし、異論はない。だが、なんだか通り一遍というか、ぼんやりした表現に思う。
また、この意義に照らして提案される健康経営の施策は
- 健康診断受診率の向上
- 残業規制
- 禁煙促進、運動推奨、食事指導
- 長期休暇制度の導入
といったあたりが多く、正しい取り組みだとは思うがこちらも教科書通りという感じがする。
当社も健康経営に関するサービスを提供する立場なのでこうしたアプローチをするにはするが、
実はなんだか私自身が上手く伝えきれていないな、とも思っている。
そこで、私がなぜ健康経営を推進したいのか、経営者はなぜ社員の健康に投資する方が生産性があがると思うのか、かみ砕いて書いてみようと思う。
社員の体調と生産性
「社員が健康になると生産性が上がる」
というよりも
「社員が健康を害すると確実にモチベーションが下がり、生産性も下がる」
という表現のほうがしっくりくる。
健康を害するというのは大きな病気や怪我だけでなく、風邪をひいた、日々の業務の疲れが取れずなんとなくダルい、
そういった、「体が感じるなんらかの不調」は気持ちをネガティブに引っ張る要素がとても強い。
もっと平たく言うなら、私は1977年生まれで今年40になるが30歳を過ぎたあたりから
運動不足による疲れや、脂肪が固まったままの下半身やむくみなど、
加齢を感じる要素が目立ち始めたときから日々テンションは下がっていた。
仕事はとても好きではあるが、自分の体で感じる「老い」と向き合いながら
日々溜まる一方の業務に残業を余技無くされる状況ではパフォーマンスを上げたくても
気持ちをポジティブに持っていくのは結構難しい。
もっと言うと、たとえ残業が無いめちゃくちゃホワイトな企業だったとしても
自分の体が以前と違い、疲れやすさや体調を崩しやすいということだけでストレスだったとのではないかと思う。
私は「老い」を感じるのがイヤで、なんとか食い止めたくて30代から運動を始めたが
運動をしていなかったら、毎日「今日もがんばるぞ!」と前向きに業務に取り組めていたかと言われるとその自信はまるでない。
中高年は心身を崩しやすいのが普通
とかく体調を崩すというのは、「休みづらい」空気の会社では周囲への迷惑を考えるし、自信を持てなくなるきっかけになってしまう。
さらに、一旦気持ちがマイナスな方に振れてしまうと、そこを簡単に切り替えるには口で言うのは簡単だが実践するのは難しい。
つまり、社員の年齢が上がれば上がるほど「心身共に健康で高いパフォーマンスを出せる社員」は、
かなり少なくなり、たいていの社員はちょっとしたきっかけで体調やメンタルを崩しやすい素地があるのではないかと思う。
中高年になれば会社の業務だけでなく子育てや介護などプライベートでの変化によるストレスも発生する。
そうした状況で「パフォーマンスを上げ続ける」というのは、よほど精神も体力も鍛錬されている人でない限り難しいことだと思う。
そしてそれが実践できるのはごく限られた一部の人。
なまじ、自己啓発系の本などで知識やノウハウを知り得る機会が増えた分「知っていながらできない」ということが反ってストレスになるのではないだろうか。
社員がリフレッシュできる機会を増やすことで”後ろ向き”を防ぐ
健康経営への取り組みは、その投資がやがて企業の成長に繋がると捉えられていて、確かにそうだとは思うが、
それによって「業績がこれだけ伸びた」という数値は示せるものではないと思っている。
資本を投下する以上、結果として数字で示せるのがベストではあるが、健康経営については
「社員がリフレッシュできること」によって、ネガティブな気持ちを少しでも切り替える機会を作る、ということが大事だと考えている。
何らかのストレスがあるのが普通、前提として考え、それを少しでも軽減できる施策が必要なのではないだろうか。
そうすることで、モチベーションを上げることは難しくても、
後ろ向きならずに業務に取り組める社員が一人でも多くなることは、企業にとって必ずプラスになると考えている。