フィードバックでは注意を!イライラ感情は伝わりやすい

コンサルタントとして働いていたときには、クライアント先のオフィスで常駐するスタイルがほとんどでした。

そして、ある程度大きいプロジェクトになると数社との連携になるため、同じオフィスルームに他社の社員が一緒に常駐することも時々ありました。

クライアント先のオフィスで他社もいるという状況下では、セキュリティリスクを考慮して、プロジェクトに関わる話以外(たとえば自社の話や他のプロジェクトの話など)の雑談は控えるように言われています。

しかし時と場合によっては話の流れで、他社の社員同士のやり取りが時々聞こえてくることもたまにありました。

 

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ある会社の、先輩社員と後輩社員と思しき二人のやりとり。

後輩社員の資料作成方法やクライアントとのメールのやりとり、会議での発言などについて、先輩社員が気になった点を後輩社員に指摘しているやりとりが聞こえてきました。

背景が分からないのでどちらがどうだという判断はできませんが、先輩社員が伝えていることはコンサルティング会社では当たり前の指摘なのだろう、ということはふたりの会話からおおよそ想像はつきました。

先輩社員の伝えていることはもっともな正論という感じでしょうか。

ですが、後輩社員は黙って聞いているだけ。

別に注意されているのがイヤという様子ではないけれど、最終的に「はい」とか「わかりました」と答えるのみにとどめて、自身が納得したというニュアンスの言葉はありませんでした。「確かにそうですよね~」と、やや、はぐらかしているようにも取れるような会話で応じていました。

なんとなく後輩社員の気持ちが分かるようなやり取りでした。

 

先輩社員の話していることは至極正論で、しかもその指摘は後輩の成長に繋がるフィードバックなのだろうとは想像できました。
しかし、傍から見聞きしていると、話していることよりも

「なんか端々にイライラの雰囲気がある」

という空気感が伝わってきます。

 

私の推測ですが、恐らく先輩社員は、仮に「自分がイライラしている」と自覚していてもそれを表に出さないようにしているだろうし、もしかしたら自身が苛立っていることには気づいていないかもしれない。

表現が難しいのですが、あからさまに怒鳴るとか「ちゃんとして」と苛立ったような話し方・表現は使っていません。
先輩社員本人は、至って「冷静に伝えるべきことを伝える姿勢を意識している」ように見えました。

でも、「ちょっとイライラしているよね」という空気をどうしても感じてしまう。

似たような事象に何度か遭遇したことがあるひとも結構いるのではないでしょうか。

 

フィードバックする時には「伝わる空気」も意識する

私自身も過去に誰かから注意されたり、誰かにフィードバックしたり、そういうときにイライラの空気はなかったかと振り返ると、全部がyesといえる自信はない。

少し話が逸れますが、一般的な「効果的なフィードバックの仕方」には

  • みんながいるところで注意しない
  • 話しは短く、注意すべき事実を淡々と伝える
  • 注意したあとは、普段どおりに話しかける

おおむねこのようなことがポイントだと認識されていると思います。

 

でも、これだけでは足りないことに、他社の社員のやりとりを見て感じました。
「イライラの空気を伝えない」ということがそれらの前提にないと、全く意味がありません。

とはいえ「イライラ空気を抑える」というのは口で言うほど簡単なことではないとも思います。
先ほど書いたように、指摘をしている側はきっと、感情を抑えて伝えていると思っている、あるいは、苛立ちそのものに気づいていないからです。
でも傍から見ると「端々に見えるイライラ」はある。

 

なぜ「イライラ」は伝わりやすいのか

イライラの空気を伝えないためにどうしたらよいのか。

その前に、イライラ感情はなぜ伝わりやすいのでしょうか。

この問いをとっさに聞かれたら「なんとなく空気で・・」と言いそうなくらい、言葉で表現するのは難しいと思います。
しかし、スタジオ運営をとおして日頃からひとの体の動きに注力している私から見て、一つだけ「こういうことではないか」と言えることがあります。

 

それは、体がストレスや緊張で縮こまっている状態で出る声と、リラックスしている状態で出る声は明らかに違う、ということです。

ストレスで体の筋肉が全体的に縮んでいるときの声は、力が入っていて、話す抑揚が自然ではなく、やや低め、不自然なハリを感じる。 

リラックスしている時は、声に力が入っていることはあまりなく、自然な抑揚で、抜けるような比較的高めの声、耳障りは悪くない。

このような違いがあります。

 

筋肉は脳の伝達を通じて動くため、脳からの司令が、ストレスなのかリラックスなのかによって体の状態が変わるからです。

これは顔の筋肉も同様なので、緊張しているときの表情とリラックスしているときの表情に違いがあるのは、ある程度分かるかと思います。
何かをガマンしていたり抑えているときは、全体的に表情はこわばっています。

冷静に努めていても、気持ちのどこかにストレスがある状態だと、声や表情を通じて「イライラした空気」は伝わってしまうということです。

 

「イライラ」を伝えないために必要なこと

では、イライラの空気を伝えずにフィードバックをするにはどうしたらよいのでしょうか。

まずは声や表情に表れないようにするために、気持ちをしっかり切り替えておく必要があります。
そのためには、フィードバックするまでに、ある程度時間を置くことも時には必要なのではないでしょうか。

また、最初は気持ちを切り替えている状態でスタートしても、話しているうちにだんだんにヒートアップしてしまうひともいる。そういう場合は一方的な話にせずに、対話にするのが良いと思います。

一方的に話すことは、自分の話を自分の耳でも聞くことになるので、自分自身を肯定しやすい状況に陥るからです。

 

個人的な考えではありますが、対話形式にすることで相手の考え方やモノの見方を知ることができる。
相手を知ることで自分との違いに気づけば、自分の中に「思考」が出てくると思います。

そして、「思考」はマイナスの感情を遮る有効な手段でもあると思います。

そもそも、イライラしてしまう根底には「なぜできない」「なぜこうしない」という自分都合の視点(相手には見えない視点)が少なからずあるように感じます。
自分自身を振り返っても「わたしの一方的な考え方」に気づいていないときはイライラしています。
そうならないためには、対話にすることで相手を知る、冷静になる、というスパイラルに自分自身をコントロールするのが有効ではないかと思います。

 

まとめ

  • 相手にフィードバックするとき、相手は内容よりもマイナスの空気を感じ取る
  • 冷静になっているつもりでも、イライラした感情は、声や表情で伝わってしまう
  • フィードバックをするときは、しっかり気持ちを切り替えるまでは時間を置く
  • 相手の考えを知って「思考」を挟むことで自分をコントロールする

 


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