コミュニケーションスキルが問われる時

コミュニケーションスキルに関する情報は世の中にたくさんある。

書店に行けばかなり幅広いジャンルで書籍もあるし、購入がイヤならネットで検索してもそれなりに情報を得られる。

自己啓発意識の高いビジネスマンならコミュニケーションスキルに関する研修を何回か受講している人も多いのではないだろうか。

 

だが、コミュニケーションに関する問題はなくならない。

対面でも電話でも、ネットの中でもどこでも会話の衝突は起きているし、悩んでいる人も多い。

それは仕事だけに限らず、友人との会話や家族間のコミュニケーションも含めて。

 

コミュニケーションはスキル(知識、テクニック)を習得していればスムーズな会話になるのだろうか?

 

コミュニケーションスキルとはテクニックなのか?

 

「コミュニケーション」と言ったときにそれは単なる「会話」を示すのか、それとも会話も含めた「相手の理解」や「相互の認識共有」まで含むのか。

その線引きも結構曖昧になっていると思う。

私はこれまで経験した会社員生活の中で少なくとも20回近くはコミュニケーションスキルに関する研修に参加した経験があるが、それらの研修は前提として「コミュニケーション」は単なる会話に留まらない、「相手の理解」や「相互の認識共有」も含んでいた。

特にコンサルティング会社に所属していた時には、プレゼンやインタビューに関する研修、会議を上手く進めるためのファシリテーション、ロジカルコミュニケーションなど、充実した内容の研修を受講させてもらえていた。

研修で学んだことを実践して上手くいったケースもあるし、スキル研修としては意義があり、大変ありがたいことだった。

しかし、内容に疑問を感じることもしばしばあったり、小手先のテクニックに傾倒しているように感じていて、コミュニケーションスキルって何だ?という思いはずっとくすぶっている。

「いかにもロジカルな方法です、これでムダな会議にはなりませんって感じだけど、その通りやれば本当にお客さんと認識を一致させられるのか」

と。

 

実際、コンサルティング会社に勤めていた時には、上司がお客さんとの打ち合わせで衝突した場面もあった。

自分たちコンサル側は役員やマネージャーも参加、お客さん側も上の役職の方が参加した打ち合わせで、まるで双方の話がかみ合っていない。

コンサル側は事前に打ち合わせた通りに進めることが優先、お客さん側はそのやり方が理解できず徐々にイライラ、その場で収拾つかないから打ち合わせを切り上げて、自分たち下っ端がお客さん側の担当者とランチをしながら根回しをする、というフォローで収める。

私の所属していた会社では、ロジカルシンキングやらファシリテーションなどのコミュニケーションに関する研修は外販しているくらい自信のある内容だったようだが、お客さんと衝突している姿を見ると「研修の成果はどうした」と思わずにはいられなかったものである。

 

また、一般的に広まっているコミュニケーションの汎用テクニックである「ミラーリング効果」。

話を聞いているときの態度や口調、しぐさを相手と同じようにする、という技法。

それによって相手への親近感が湧く、好感を持たれるという効果があるとされているが、実際「いかにもやってます」というのが会話の最中に見えると、親近感どころか苛立ちを覚える。

 

気持ちが態度に自然に現れているなら気にならないけど、相手との距離を縮めようとして先にテクニックに走ればマイナスになる代表例だと思う。

 

 

コミュニケーションスキルが問われるとき

 

ちなみに私はいまだにコミュニケーションの取り方で悩むことがある。

どんな場面で悩むかといえば、

  • 相手との会話で相手の「マイナスな感情」を感じた時
  • 自分の感情を上手くコントロールできない時

である。

 

メールや電話、対面、どの場面でも有り得る。

そして上記いずれの場合も、お互いの不快な感情が飛び出す前に防ぎたいものだが、必ずしも防げるわけではない。

大事な相談をこちらからお願いしているのに、自分のせいで相手に不快な思いをさせたということは数知れず。

こういう時に己のコミュニケーションスキルの無さを痛感する。

スキル研修やスキル本で知識やテクニックはいろいろ知っているはずなのに、あまり役に立っている実感はない。

 

 

相手の感情を汲み取る力が必要

 

コミュニケーションに関するスキルは知らないよりは知っていたほうがいいとは思う。

しかし特にビジネスにおいて必要な「コミュニケーション」は単なる会話に留まらず、「向き合う相手を理解する」「お互いの認識を合わせる、事象を共有する」という部分まで含めたものだ。

その場合はまず必要になるのは、会話の流れから相手の感情を汲み取る力ではないかと思う。

表情や声のトーンはもちろん、話す言葉の選び方、抑揚、会話の中で発生するありとあらゆる細かい相手の発信情報をどれだけキャッチできるかではないだろうか。

そして自分自身も同様に、相手が受け取れるように相手に合わせた発信する力を持つこと。

その方法はテクニックではなく、あくまでも「相手とどのように意思疎通を図りたいのか」を考えて、相手の感情をキャッチし、お互いがお互いを理解できるように努めるしかないのだと思う。

つまり、コミュニケーションスキルの基本は相手を思う気持ち。

 

 

真摯に向き合う会話がコミュニケーションスキルの土台

 

人間は一人ひとり違うのでどんなに分かりあっている関係性でも会話の衝突は無くならないもの。

近しい関係だからこそ起こる衝突もある、家族間などは特にそう思う。

 

また、年齢が重なるほどそれぞれが持つ経験値に差が出るし、単語一つとってもその使い方に差が出てきて相手との会話に違和感を覚えたりすることもある。

特に年齢が上の方と接することが増えてくると

「あぁ、この人はそういう意味でその言葉を使うんだ」

と、相手が使い慣れている単語や表現がこちらが認識していることとズレていることは結構あると思う。

そのズレを早い段階で察知して「おっしゃっている意味は○○ですか?」と修正できればよいが、それができずにズレたまま会話が進んでしまい相手の怒りを買ってしまった経験も恥ずかしながらある。

 

コミュニケーションスキルは一筋縄ではいかない。

しかし、会話をする時は少なくとも相手と真摯に向き合い会話をすることがコミュニケーション能力を高める土台ではないかと思う。

そんなことを言うと「人と会話するって疲れる」という声が聞こえてきそうだが、まさにそう。

人と真摯に会話をすることは労力を伴うことであり、だからこそ、しっかり話ができる相手とは信頼関係を作れるのだと思う。

コミュニケーションスキルを問われる時、それは相手を思う気持ちが自分自身にあるのかを問われている時、といえるのではないだろうか。

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